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「国産AI」の営業トークは本当か?裏側が海外LLMのAPIというケースの見抜き方【2026年版】

10分で読めます執筆:AI講師・生成AIトレーナー / x3d株式会社 代表取締役
「国産AI」の営業トークは本当か?裏側が海外LLMのAPIというケースの見抜き方【2026年版】

執筆: 武石幸之助(x3d株式会社 代表取締役)
公開日: 2026年7月21日

【結論】「国産AI」の見抜き方とは、営業トークの「国産」がプラットフォーム(UI・運用)を指すのか、LLM(基盤モデル)を指すのかを質問で切り分ける確認手順です。

  • 「国産プラットフォーム」の多くは、裏側でOpenAI・Anthropic・Google等の海外LLMをAPI経由で利用している(それ自体は欺瞞ではなく一般的な設計)
  • 確認すべきは4点:基盤モデルの正体・推論の実行場所・データの学習利用有無・準拠法
  • 基盤モデル自体が国産のLLMは2026年7月時点で実在する:tsuzumi 2(NTTデータ)、PLaMo 2.0 Prime(Preferred Networks)、Takane 32B(富士通)など

この記事では、生成AIサービスの商談・選定を担当する情報システム部門・調達担当者向けに、ベンダーに確認すべき質問リストを使って「国産」表記の中身を自力で検証できる状態を目指して解説します。


「国産AI」とは何を指すのか — 2つの意味を区別する

「国産AI」とは、文脈によって「国内事業者が運営する生成AIサービス(プラットフォーム)」と「国内で開発された基盤モデル(LLM)」のどちらかを指す言葉です。この2つは技術的にも法的にもまったく別物ですが、営業資料では区別されずに使われることがあります。

  国産プラットフォーム 国産LLM
国産なのは何か UI・管理機能・運用・契約主体 AIモデル(基盤モデル)そのもの
AIモデルの例 GPT・Claude・Gemini等(海外モデルのAPI利用が多い) tsuzumi 2、PLaMo 2.0 Prime、Takane 32B、Sarashina2 mini、cotomi v3 など
推論(AIの処理)の実行場所 API提供元の環境に依存(国内完結の構成も可能) 国内データセンター・オンプレミスでの完結が可能
典型的な訴求 「国内データセンター」「日本語サポート」「セキュア」 「純国産モデル」「日本語特化」「経済安全保障」

重要なのは、海外LLMをAPI経由で使う国産プラットフォームは、欺瞞でも手抜きでもないという点です。最新の高性能モデルを国内の統制環境から使えるようにする合理的な設計であり、多くの企業にとって最適解になり得ます。問題は構成そのものではなく、「国産」という言葉から買い手側が「モデルも国産」「データは絶対に国内完結」と誤解してしまうことにあります。だからこそ、ラベルではなく構成を質問で確認する必要があります。

なぜ区別が必要か — 「国産」の定義は公的にも論点になっている

この区別は言葉遊びではありません。デジタル庁は2026年3月、政府の生成AI基盤「源内」で試用する国産LLMを選定した際、選定条件として「国内で開発された大規模言語モデルであり、開発経緯・開発方法・開発体制、独自開発モデルか派生モデルかの区別などが具体的に説明可能であること」を挙げました。つまり政府調達の文脈でも、「何をもって国産とするか」は自己申告ではなく説明責任を伴う事項として扱われています。

選定された7モデル(その後の試用は5社)には、ゼロから独自開発されたモデル(tsuzumi 2、PLaMo 2.0 Primeなど)と、海外のオープンモデルをベースに日本語性能を強化した派生モデル(Llama-3.1-ELYZA-JP-70Bなど)の両方が含まれます。派生モデルも「国内で開発された」ことに変わりはなく、性能面で優れた選択肢です。ここでも大切なのは優劣ではなく、由来が説明可能であることです。民間の商談でも同じ基準を適用すればよい、というのが本記事の提案です。

ベンダー確認チェックリスト — 商談でそのまま使える質問表

以下は、x3dが1,700社超の法人支援の現場で使っている確認観点を、質問票の形に整理したものです。RFI(情報提供依頼)や商談の場でそのまま使えます。

# 質問 確認したいこと 要注意な回答例
1 基盤モデルは何ですか?(開発元・モデル名・バージョン) 自社開発か、海外モデルのAPIか、派生モデルか 「独自AI」「当社エンジン」など固有名を答えない
2 推論処理はどこで実行されますか?(国名・リージョン名・事業者名) プロンプトが処理される物理的な場所と管理主体 「国内データセンターです」(保存の話だけで推論の場所を答えない)
3 入力データ・保存データはそれぞれどこに保管されますか? 保存場所と保存期間。推論場所と保存場所は別論点 保存と推論を区別せずに「すべて国内」と一括回答する
4 入力データはモデルの学習に利用されますか?契約書のどの条項に明記されていますか? 学習利用の有無が口頭説明でなく契約で保証されるか 「学習には使われないはずです」(契約条項を示せない)
5 準拠法と管轄裁判所はどこですか? トラブル時にどの国の法律で争うことになるか 再販サービスで、原契約(海外事業者の規約)が優先される構成
6 API提供元・再委託先を含むデータフロー図を提示できますか? 自社データが通過するすべての事業者と国 「セキュリティ上お見せできません」(概要レベルすら開示しない)
7 第三者認証・監査レポート(ISMS認証等)はありますか? セキュリティ主張が第三者により検証されているか 認証名を曖昧にする、取得予定のまま具体時期を示さない
8 モデル・提供構成が変更される場合、事前通知はありますか? 裏側のモデル切り替えが黙って行われないか 変更通知の規定が利用規約にない

ポイントは質問2と3の分離です。「データは国内に保存されます」という回答は、推論(プロンプトがAIモデルで処理される瞬間)がどこで行われるかを何も述べていません。保存(at rest)と処理(in use)を分けて質問すると、構成の実態が明確になります。誠実なベンダーであれば、この質問リストにはすべて具体的に回答できます。逆に、回答を避ける・曖昧にする項目があれば、その項目こそが自社の要件と照らして精査すべきポイントです。

「裏側が海外LLM」を悪と決めつけない — 構成別の合理的な使い分け

チェックリストで構成が判明したら、次は自社要件との照合です。構成自体に良し悪しはなく、要件との適合だけが問題です。

  • 海外LLM API型(国産プラットフォーム経由):最新モデルの性能を国内の統制環境で使いたい企業に合理的。一般的な業務利用ではこの構成で十分なケースが多数です。
  • 海外LLM 国内リージョン型(Azure OpenAI Serviceの東日本リージョン等):推論まで国内で完結させたいが、モデル性能は妥協したくない企業向け。
  • 国産LLM型:行政・金融・重要インフラなど、モデルの開発主体・学習データの由来まで説明責任が求められる領域向け。tsuzumi 2は1GPUで動作する軽量設計、Takane 32Bも1GPUで推論可能とされており、オンプレミス・閉域環境での運用に向きます(2026年7月時点の各社公表情報)。

どの構成が自社に合うかは、扱うデータの機微度・業界規制・調達要件から逆算します。プラットフォーム全体の選定軸は法人向け生成AIプラットフォーム比較の記事で、「国産だから安心」という訴求の根拠と限界は姉妹記事(国産プラットフォームの「安心」の根拠と限界)で詳しく整理しています。

確認結果を社内ルールに落とし込む

チェックリストで得た回答は、商談メモで終わらせず社内文書に反映させることで初めて統制として機能します。具体的には次の3点です。

  1. 選定基準書:質問1〜8を自社の必須要件・加点要件に振り分け、サービス比較表の評価項目にする
  2. AI利用規程:「入力してよいデータの区分」を、確認したデータフロー(学習利用の有無・保存場所)と対応させて定義する
  3. 契約チェックリスト:学習利用の禁止・変更通知義務・準拠法を契約書の必須確認項目にする

個人情報保護委員会も、個人データを含むプロンプトを入力する場合には、サービス提供事業者が当該データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認するよう求めています(2023年6月の注意喚起)。確認は推奨ではなく、実務上の義務に近い位置づけと考えるべきです。AI利用規程や選定基準の整備を支援するサービスとして、x3dはAI規程アドバイザーを提供しています。質問に答えるだけで、AI事業者ガイドライン(第1.2版)を参照して設計されたAI利用規程などの規程草案一式を約10分・無料で作成できます(生成されるのは草案であり、法的助言ではありません)。また、選定・確認プロセスを含む導入全体の伴走支援はAI導入支援(AI BPR)をご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 「国産AI」とは何ですか?

文脈により2つの意味があります。1つは国内事業者が運営する生成AIサービス(プラットフォームが国産)、もう1つは国内で開発された基盤モデル(LLM自体が国産)です。前者の多くは海外LLMをAPI経由で利用しており、両者は技術的にも法的にも別物として区別する必要があります。

Q2. 国産プラットフォームの裏側が海外LLMだった場合、問題がありますか?

構成自体は問題ではなく、一般的で合理的な設計です。問題になるのは、自社の要件(推論の国内完結・学習利用の禁止など)と実際の構成が食い違っているのに、「国産」という言葉でそのギャップが見えなくなっている場合です。要件と構成の照合が本質です。

Q3. ベンダーに最低限確認すべきことは何ですか?

4点です。(1) 基盤モデルの開発元とモデル名、(2) 推論処理の実行場所(国・リージョン・事業者)、(3) 入力データの学習利用の有無と契約上の根拠条項、(4) 準拠法・管轄裁判所。この4点に具体的に答えられないベンダーとの契約は慎重に検討すべきです。

Q4. データの「保存場所」と「推論の実行場所」はなぜ分けて確認するのですか?

「データは国内保存」という回答は、プロンプトがAIモデルで処理される場所については何も述べていないためです。保存(at rest)は国内でも、推論(in use)は海外のAPI提供元環境で行われる構成があり得ます。両方を明示的に質問することで構成の実態が分かります。

Q5. 基盤モデル自体が国産のLLMには何がありますか?

2026年7月時点で、NTTデータ「tsuzumi 2」、Preferred Networks「PLaMo 2.0 Prime」、富士通「Takane 32B」、ソフトバンク「Sarashina2 mini」、NEC「cotomi v3」などが実在し、デジタル庁の政府AI基盤「源内」の試用モデルに選定されています。独自開発モデルと海外モデルベースの派生モデルの両方が含まれます。

Q6. 「独自開発モデル」と「派生モデル」の違いは何ですか?

独自開発モデルはゼロから学習させた基盤モデル、派生モデルは既存モデル(海外のオープンモデル等)をベースに追加学習したモデルです。派生モデルが劣るわけではありません。デジタル庁の選定条件でも、どちらであるかを「具体的に説明可能であること」が求められており、由来の説明責任が基準になっています。

Q7. 入力データが学習に使われないことはどう確認すればよいですか?

口頭説明ではなく、契約書・利用規約の該当条項の提示を求めてください。個人情報保護委員会も、個人データを含む入力を行う場合は提供事業者が機械学習に利用しないことを十分に確認するよう注意喚起しています。条項を示せない場合は要注意です。

Q8. こうした確認を社内の規程や選定基準に整備する支援はありますか?

x3d株式会社では、質問に答えるだけでAI利用規程などの草案を無料作成できる診断ツール「AI規程アドバイザー」を提供しています。また、特定ベンダーに依存しない立場での選定支援・導入伴走をAI導入支援(AI BPR)として提供しています。1,700社超の法人支援実績があります。


参考文献・出典


武石幸之助(x3d株式会社 代表取締役)
2017年より(前身活動を含む)企業のAI導入支援に従事し、これまでに1,700社超の法人支援、5,000名超への研修提供を行う(受講満足度99%・2024年度研修アンケート)。
特定ベンダーに依存しない立場から、生成AIプラットフォームの選定・導入・全社教育・業務実装(AI BPR)までを一貫して支援している。
x3d AIX 総合研究所では、企業のAI活用に関する調査・情報発信を行う。


x3d株式会社では、本記事で解説した生成AIサービスの選定・ベンダー評価に関する企業研修・導入支援を提供しています。
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本記事は2026年7月時点の公開情報に基づいています。各モデル・サービスの提供状況は変更される可能性があるため、最新情報は各公式サイトをご確認ください。本記事は一般的な確認方法の解説であり、特定のサービスの評価を目的とするものではありません。

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