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Azure AI Searchのagentic retrievalとは|クエリ分解・並列検索・Knowledge Base【2026年9月】

8分で読めます執筆:(CTO / 主席研究員(テクニカルフェロー))
Azure AI Searchのagentic retrievalとは|クエリ分解・並列検索・Knowledge Base【2026年9月】

【結論】Azure AI Searchのagentic retrievalとは、複雑な質問をサブクエリに分解して並列検索し、引用付きの根拠情報を返すマルチクエリの検索パイプラインです。

  • 2026-04-01 REST APIでGA(一般提供)した最小構成は「抽出型のみ」で、回答合成や可変のreasoning effortはpreview限定に戻った
  • Knowledge Base(オーケストレーション)とKnowledge Source(検索対象の定義)を最低1つずつ用意する必要がある
  • 課金はAzure AI Search側の検索トークンと、クエリ計画・合成に使うモデル側のトークンの二系統に分かれる

この記事ではAzure AI SearchでRAG・エージェントを実装するエンジニア・アーキテクト向けに、2026年9月時点の公開情報に基づいて解説します。


agentic retrievalとは

Azure AI Searchのagentic retrievalとは、チャットやエージェントからの複雑な質問向けに設計されたマルチクエリの検索パイプラインです。ユーザーの質問を複数のサブクエリに分解し、並列で検索を実行し、セマンティック再ランクを経て、根拠情報と実行過程のログを含む統合レスポンスを返します(出典:Agentic Retrieval Overview – Azure AI Search)。単発の質問に単発の検索を返す従来のRAGパターンに比べ、条件が複数ある質問や、会話の流れを踏まえた言い換えが必要な質問に向いています。

GAとpreviewで何が違うか

2026-04-01 REST APIは、agentic retrievalが最初にGA(一般提供)されたバージョンです。ここで注意が必要なのは、GA化にあたって一部のpreview限定機能が「除外」された点です。抽出型で根拠を返すだけの最小構成に標準化され、回答合成(answer synthesis)、可変のreasoning effort、messagesベースの複数ターン会話は、いずれも2026-08-01-previewなどのpreview APIでのみ使えます(出典:Upgrade REST API Versions – Azure AI Search)。「GAになった=全機能が安定した」ではなく、「安定させた範囲を絞ってGAにした」と理解するのが正確です。

項目 2026-04-01(GA) 2026-08-01-preview
取得方式 抽出型のみ(answer synthesis不可) 回答合成・クエリ計画あり
reasoning effort 設定項目自体が無い(最小限の分解のみ) 効果の深さを調整可能
会話の継続 messagesベースの複数ターンは非対応 対応
knowledge source 索引・Azure Blob・OneLake・Webが対象 上記に加えWork IQ等を追加。認証方式が変更
Azure portal/Foundryポータル previewが中心(GA範囲より広い機能をpreviewで提供) 同上

Azureポータル、Microsoft Foundryポータルは、agentic retrievalの全機能へのアクセスを引き続きpreview中心で提供しています。ポータルで作成したオブジェクトはpreviewスキーマになりやすく、GA RESTへ移行する際に再作成が必要になる場合があります。本番用にGA REST APIで組んだつもりが、検証だけポータルで行っていて後から気づく、という事故を避けてください。

agentic retrievalの流れ:計画・並列検索・再ランク・統合
agentic retrievalの流れ:計画・並列検索・再ランク・統合

構成要素

部品 役割
Knowledge base パイプライン全体のオーケストレーション。どのKnowledge Sourceを使うかを保持する
Knowledge source 索引付き・リモートなど、検索対象そのものの定義
Search index テキスト・ベクトルの格納先(索引タイプのKnowledge Sourceで必須)
Semantic ranker サブクエリの検索結果を再ランクする
LLM(Azure OpenAI等) クエリ計画や回答合成に使う。preview機能で主に登場する

agentic retrievalを動かすには、Knowledge Baseと、それが参照するKnowledge Sourceを最低1つ用意する必要があります(出典:Create a Knowledge Base – Azure AI Search)。GAのKnowledge Source種別は索引・Azure Blob・indexed OneLake・Webで、Work IQ等の追加種別はpreview限定です。

いつ使うか

向く 向かない(まずは単一クエリ)
複数条件の質問、会話の続き、言い換えが必要な調査 単純なFAQ、レイテンシ最優先の用途
エージェントがretrieveツールとして呼ぶ構成 索引も文書も未整備の段階

Microsoft Foundryポータルでは、Foundry IQとしてこのパイプラインをマネージドに使えます。定義や構成要素の詳細はFoundry IQとはを参照してください。カスタム実装はポータル・REST・SDKのいずれでも構築できます。

課金の考え方

公式は、課金がAzure AI Search側のretrievalトークンと、クエリ計画・回答合成に使うAzure OpenAI側のトークンの二系統に分かれると説明しています。さらに、agentic retrieval自体の課金には明示的な同意が必要です。semanticSearchをstandardにしていても、knowledgeRetrievalを別途standardに設定しなければ、GA後の課金は有効になりません(出典:Upgrade REST API Versions – Azure AI Search)。preview版で使っていたreasoning effortの調整は、GA後は選択肢自体が無くなったため、コスト調整は主にKnowledge Sourceの数と、そもそもagenticにするかどうかの判断で行うことになります。

preview実装からGAへ移行するときの注意

2025-11-01-previewなどの古いpreview APIで検証を進めていたチームは、GA移行時にいくつかの破壊的変更に当たります。retrievalReasoningEffortの設定は削除され、low・mediumで作ったKnowledge Baseはそのままでは互換性がなく再作成が必要です。outputModeも削除され、応答は既定で抽出型の根拠情報のみになります。リクエストの形も変わり、messagesはintentsに置き換わるため、会話履歴を前提にしたクライアント側のロジックも見直しが要ります(出典:Migrate Agentic Retrieval Code – Azure AI Search)。「バージョンを上げれば動く」ものではなく、Knowledge Baseの再作成とクライアントコードの改修を前提に計画してください。索引そのものやインデックス済みのコンテンツは変更不要で、作り直しが必要なのはagentic retrieval側の設定オブジェクトです。

評価と本番投入前の確認

agentic retrievalは検索結果を返すだけで、回答文そのものの正しさまでは保証しません。本番投入前には、根拠らしさだけでなく、権限フィルタが効いているか、想定外のソースを引いていないかを評価セットで確認してください。評価設計の考え方はAgentic RAGの評価設計にまとめています。実装支援はAIシステム・AIエージェント開発支援で対応しています。


よくある質問(FAQ)

Q1. agentic retrievalとは何ですか?

Azure AI Searchのマルチクエリ検索パイプラインです。複雑な質問を分解・並列検索し、根拠情報を返します。

Q2. GAとpreviewの違いは何ですか?

2026-04-01はGAですが抽出型のみです。回答合成や可変のreasoning effortはpreview限定に絞られています。

Q3. reasoning effortはGAでも設定できますか?

できません。GA版では設定項目自体が削除され、最小限の分解のみになりました。preview APIでのみ調整可能です。

Q4. Foundry IQとの違いは何ですか?

Foundry IQはagentic retrievalを使うマネージド知識レイヤです。Azure AI Search単体でもカスタム構築できます。

Q5. Knowledge Baseは必須ですか?

必須です。agentic retrievalにはKnowledge Baseと、少なくとも1つのKnowledge Sourceが要ります。

Q6. 料金は何にかかりますか?

検索トークンと、クエリ計画・合成に使うモデルのトークンです。knowledgeRetrievalの課金同意も別途必要です。

Q7. ポータルで作った設定を本番のGA APIに使えますか?

そのままでは使えない場合があります。ポータルはpreviewスキーマが中心のため、GA移行時に再作成が必要になることがあります。

Q8. 単一クエリのRAGと併用できますか?

できます。単純な質問は単一クエリで処理し、複雑な質問だけagenticに回す構成が現実的です。

Q9. x3dに相談できますか?

できます。武石幸之助が2017年より対面で行ってきたAI導入支援は、1,800社以上・5,000名以上に達しています(認定AI講師による実施分・オンライン実施分は含みません)。設計から評価まで支援します。


参考文献・出典

本記事は2026年9月時点の公開情報に基づいています。APIバージョン・課金・機能範囲は変化するため、最新情報は各公式ドキュメントをご確認ください。


x3d株式会社では、本記事で解説したAzure AI Search・agentic retrievalの設計・実装に関する企業研修・導入支援・システム開発を提供しています。
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